株主優待とは、投資した企業から配当金とは別のかたちで受け取れる利益の分配のことをいいます。
上場企業が約4000社あるなかで実施している企業は1500社ほどあり、その数は年々増加傾向にあります。企業が株主優待の新設を発表すると、投資家への利益分配が評価され株価が上昇するケースも度々あります。
また、この制度は日本独自のもので諸外国ではほとんど行われていません。
投資家は年に1回または2回ある株主優待の権利確定日に一定の銘柄を保有していることで、株主優待をもらうことができます。
株主優待には実に様々な種類があります。
自社ブランドを持つ企業では、自社商品のプレゼントや割引券が多く、飲食店などでは店舗で利用できる優待券になっているケースがあります。
また、自社商品がない企業に関しては、QUOカードやお米券、カタログギフトなどを送る場合があります。
例えば日清食品HD(2897)ですと、自社の食品の詰め合わせ。ANA(9202)は搭乗割引券。ビックカメラ(3048)は店舗での買い物優待券といった具合です。
株数や保有年数によっても優待内容が変わる企業が多く、保有数や保有年数が多いほど優待内容が豪華になります。
なお、日本の国内企業から海外投資家、海外への日本人投資家への優待の発送は行われていません。
株主優待をもらうためには、2つのポイントがあります。
1つは『優待対象株数』です。
株主優待をもらうためには、一定の株数を保有する必要があり、各企業で異なっています。
また、保有する株数が多ければ多いほど良い優待もらえる企業もあります。
もう1つは『権利確定日』です。
株主優待を受けるには、『権利確定日』に株主名簿に登録されておく必要があります。
権利確定日はほとんどの場合、企業の決算月(本決算や中間決算)の最終営業日となっています。(稀に15日や20日となっていることがあります。)
このことから、株主優待をもらえる月は3月、9月が多くなります。
株主名簿に登録されるためには、権利確定日の3営業日前に株主になっていなくてはなりません。
この日を『権利付き最終日』といいます。
権利付き最終日に株式を保有していると、配当金を出す企業であれば株主優待と同時に配当金ももらうことができます。
極端な話、この権利付き最終日に株を買い、翌日の権利落ち日に売却したとしても、株主優待をもらうことができるのです。
翌日を『権利落ち日』といいます。
権利落ち日には多くの場合、株価が下落する傾向にありますので注意が必要です。
その為、権利付き最終と権利落ち日には優待銘柄の売買高が増加する傾向にあります。
権利確定日は通常、決算期末か中間決算期末、あるいはその両方であるため、株主優待は3月、9月が多くなります。
2017年8月を例にすると、以下のようになります。
注意しておきたいのは、株主優待は現物で保有している時のみであり、信用取引で買い付けいしている場合はもらうことができません。
優待銘柄は1500銘柄以上もありますので、探すのだけでも一苦労です。
しかし、証券会社には株主優待を探すための便利なツールがありますので、それを使って優待銘柄をスクリーニングする方法が便利です。
『SBI証券』は個人投資家から一番支持されているネット証券会社で、口座数300万を誇ります。
『株主優待検索』では、優待内容や権利確定月、投資金額などの6つのカテゴリーの中からそれぞれ条件を掛け合わせて優待銘柄を選ぶことができます。
また、優待生活でお馴染みの桐谷さんのコラムや優待関連レポートなどの読み物も豊富にそろっています。
『松井証券』の『銘柄スクリーニング』も便利です。
優待選びの条件は「最低投資金額」、「権利確定月」、「優待の種類」、「流動性」の4つですが、銘柄の情報がどこよりも豊富に出てきます。
PERや配当利回り、時価総額などはもちろん、優待銘柄の売上高伸び率やゴールデンクロス達成日などのマニアックな条件も見ることができます。
証券会社 | おすすめポイント | |
---|---|---|
![]() |
【株主優待重視】
欲しい優待から銘柄を探したい方にオススメ。つなぎ売り可・不可もスクリーニングできます。こだわり条件として、「大型優良株」や「配当利回り平均以上」など選べるのも便利です。 |
今すぐ口座開設 |
![]() |
【銘柄パフォーマンス重視】
パフォーマンスも見込める有望銘柄から株主優待を探したい方にオススメ。35項目をチェックし並び替えることができるので、「経常利益伸び率」や「信用倍率」などの指標で銘柄を見つけることができます。 |
今すぐ口座開設 |
株主優待銘柄へ投資を行う人は、長期投資の方も多いようです。
そこで便利なのが『貸株』というサービスです。
貸株とは、自身が保有している株を証券会社に貸し出す代わりに金利を受け取るというものです。個人投資家から株式を借り受けた証券会社は、その株を必要としている投資家に貸し出して金利を得るという仕組みになっています。
金利は0.1%~のものが多いですが、空売りを多くされる銘柄の金利は高くなっており、1%以上の金利をもらえる銘柄は全体の3%ほどあります。
株を貸し出すというとなんだか難しそうですが、実際はネット上で「貸株」を申し込むだけの簡単な作業で完了します。
ちなみに、株を貸している状態では株主優待も配当金も得られません。
そんな時に便利なのが『優待自動取得サービス』です。これを利用すれば、普段は貸株で金利をもらいながら、権利確定日には株主名簿に掲載されるようにしてくれる非常に便利なサービスです。
株主優待自体はどこの証券会社で保有しても変わりありませんが、『貸株』と『優待自動取得サービス』を利用し、より賢い優待投資をしてみてはいかがでしょうか。
この2つのサービスを利用できる、なおかつ手数料も安い便利なネット証券は以下になります。
証券会社 | 金利水準 | 1%以上 | 2%以上 | 最大金利 | 金利見直し期間 |
---|---|---|---|---|---|
![]() |
0.1%、0.4%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%~ | 116銘柄 | 212銘柄 | 15% | 毎週 |
![]() |
0.1%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%~ | 651銘柄 | 62銘柄 | 17% | 毎週 |
![]() |
0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%~ | 133銘柄 | 77銘柄 | 13% | 毎月 |
![]() |
0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、1.7%、2.0%~ |
226銘柄 | 223銘柄 | 15% | 毎週 |
株主優待をもらいたくて株を買ったのに、値幅で負けてしまって結果的に損をしてしまう。なんてこともあるかもしれません。
そんな時には、『つなぎ売り』という方法があります。
これは狙っている銘柄を現物買いと信用売りで持つことで価格変動リスクを無くし、株主優待を得るという方法です。掛かるコストは手数料のみで、価格変動で損をすることなく株主優待を得ることができます。
一見、美味しい売買に思えますが、1つ注意点があります。
なぜなら、株不足になった時に発生する逆日歩(逆日歩)というコストが付く場合があるからです。特に、人気の優待銘柄は多くの人がクロス売買を行うために逆日歩が発生し易くなります。
場合によっては逆日歩のコストだけで数千円から数万円も発生する場合があり、2016年3月には伊藤ハム(2284)の株主優待目当てで多くの投資家がつなぎ売りをした為に逆日歩が発生。その結果、5千円相当のハムをもらうのに3万6千円を支払うという事態が発生しました。
信用取引には、取引所が決める『制度信用』と各証券会社が決める『一般信用』がありますが、この取引には逆日歩が発生しない『一般信用』を利用します。
しかし、制度信用では売りができる銘柄が約1700ほどありますが、一般信用では証券会社により異なっています。この一般信用売建銘柄が一番多いのは『auカブコム証券』です。
同社は親会社であるMUFGとの協業・商品連携と自製システムによりサービス体制の構築で多くの銘柄を一般信用で売ることができるそうです。
優待のタダ取りをしようとしたのに空売りができない!とならない為にも、つなぎ売りをする場合には『auカブコム証券』がおすすめです。
ちなみに、同社は手数料も安く、50万円以下(現物取引)であればネット証券最大手の『SBI証券』よりも安いので、少額の取引であれば手数料面でも有利です。
証券会社 | 10万円 | 20万円 | 30万円 | 50万円 | 100万円 |
---|---|---|---|---|---|
![]() |
97円 | 194円 | 270円 | 270円 | 1,069円 |
![]() |
150円 | 199円 | 293円 | 293円 | 525円 |
最後につなぎ売買の手順を解説いたします。
『auカブコム証券』の一般信用(長期・売短)は在庫があり、人気の優待銘柄は在庫がなくなってしまい、売れない事態が発生する場合があります。
優待銘柄を決めたら、1日1度は在庫状況を確認しましょう。
在庫が十分ある場合は、手数料を最小に抑えるために「権利確定付最終日」に発注します。
この時、約定価格を同じにするために取引開始前に現物買いと一般信用売りを成行で発注します。
品渡しとは信用の売建玉を、保有している現物の株式を充当することにより、信用売建玉と現物株式を決済すること。
「現渡」で返済すれば、現物売却手数料と信用決済手数料が掛かりません。
これでつなぎ売買の終了です。この取引にかかる手数料が優待価格を上回ってしまうと損をしてしまいますので、優待利回りの低い銘柄を取引される場合には手数料を計算しておいた方が良いでしょう。
Yahoo!株価予想にて2015年「ベストパフォーマー賞」、「最高勝率」を同時受賞。
ブログ「インカムライフ.com」代表。
複数メディアにて活動中。
株主優待株や好業績株の値動きを捉えた中期投資に自信。
株主優待の銘柄探しの基準としては、割安で好業績でなおかつ優待利回りが高いことがオススメです。
割安 × 好業績 × 高い優待利回り
私がもらっている優待でダイヤモンドダイニング(3073)があるのですが、使用できる店舗が関東圏にしかありません。飲食店にこういう銘柄は多いのですが、すかいらーくは全国にあります。
優待商品が全国で使えるというのは重要で、地方の個人投資家も買っているということになります。
オリックス(8591)や大和証券(8601)のように東証一部に上場している大型銘柄は機関投資家が売買しますので、板も厚く配当落ちがあまりなくて強い傾向があります。
実際に保有していた時には、配当分は落ちましたが優待分はまるまる得したかたちになりました。
また、吉野家HD(9861)は全国にあって便利なのですが、実はグループ企業に、はなまるうどんや京樽があって、そこでも吉野家優待のサービス券が利用できます。
銘柄探しに雑誌などの特集記事として掲載されている優待銘柄に注目が集まるケースが多いこともあるかと思います。しかし、そういった銘柄の中には既にPERが高過ぎるものが多いので、結果的に値幅で負けてしまうことがあります。
4月以降ジュニアNISAでも買われているアトム(7412)やヴィア・ホールディングス(7918)などは既に割高ですので、人気の優待銘柄は割安かどうかチェックすることが大事ですね。